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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)467号 判決

被告人

今井史朗

外一名

主文

原判決を破棄する。

被告人兩名を各懲役二年に処する。

理由

職權を以て調査するに原判決によれば原審はその判示二、として被告人兩名は共謀の上昭和二十四年四月六日より同年六月二日迄の間起訴状添附第一表記載の如く同年四月六日、四月十三日、四月十七日、四月二十八日、五月十一日、五月二十二日、六月二日の七囘に亘り何れも神戸市生田區占領軍兵營附近の路上で官氏名不詳の占領軍軍人から連合國占領軍の財産である同表記載の総計百八十七点の衣料品を故なく買受けたとの事実及びその判示三、として被告人兩名は共謀の上右買受けた衣料品中起訴状添附の第二表に記載してある勝野釮二、勝野嘉良、勝野義郞、田中義勝、坪内文子、加藤芳一、伊藤一郞、宮島幹、淺井正敏、加藤七郞、加藤昭男、高木十寸一、河合成見、加藤希男に賣渡した物件は各其買受けた後賣渡した日迄被告人兩名の肩書住居其他で故なく所持していたとの事実を各認定した上右判示二、及び三の各事実は夫々昭知二十二年政令第百六十五號第三條第一條第一項に該當し且つ併合罪の関係にあるとし更にその主文第二項において右有罪と認定した以外の所持の点即ち被告人兩名が共謀してカツターシヤツ外四点を昭和二十四年九月十四日迄及び起訴状添附の第二表中氏名不詳者に賣渡した冬ズボン九本外四十七点の衣料品を年月日不詳時迄不法に被告人兩名の肩書住居其他で所持して居たとの部分に付て被告人兩名に無罪の言渡しをしている即ち原審は連合國占領軍の財産を不法に買受收受した事実とその結果當然生ずるその不法所持の事実は各別個であり從つて各別に昭和二十二年政令第百六十五號違反の罪が成立するとの見解にたつものであることが明かである然しながら連合國占領軍財産の不法收受の事実中にはそれによつて當然生ずる不法所持の事実を包含するものであつてその不法收受の事実についての公訴の提起があれば當然その結果生ずる不法所持の事実も審判の範圍に屬し仮令不法收受について証明なしとするもその不法所持の証明がある以上有罪の言渡しをなすべきものであるから(昭和二十四年十二月六日言渡最高裁判所昭和二十四年(れ)第一〇三四號事件の判決參照)その不法收受の事実を認定しこれを有罪とする以上その結果當然生ずる不法所持の事実を併合罪の関係として重ねてこれを有罪とし又は無罪と判断することは許されぬものと解すべく從つて原審の措置は刑事訴訟法第三百八十條に所謂法令の適用に誤りがありその違法は判決に影響を及ぼすこと明らかである。

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